利用者の権利を守る法律知識

 
監修        
 

元参議院法制局参事 藤田弓子(ふじた ゆみこ)         

 

 高齢者の権利を守るために高齢者虐待防止法や成年後見制度などの法整備がなされています。ただ、法律が充実していても活用方法を押さえておかなければ、せっかくの法律も意味がありません。

 このコラムでは、利用者の権利を守る法律知識と題して、現場を任されるリーダーにも知っておいてほしい法律知識を解説していきます。より深い法律知識については、弊社書籍『高齢者の権利擁護-制度と契約の実務-』でご覧いただけます。

 

 

第3回 身寄りのない高齢者のための後見制度
 

ぷらすクローバー画像のサムネール画像のサムネール画像市長さんが法定後見人になってくれる

 前回のコラムでもお話しましたが、法定後見の開始の申立人になれるのは限られた人になります。おさらいしますと、配偶者や四親等以内の親族、本人や検察官等です。基本的には関係者の申立てによって利用が開始される制度となっています。

 しかし、判断能力が不十分な認知症高齢者や精神障害者、知的障害者の中には、身寄りのない方々も少なくありません。そこで現制度では、親族等による申立てが期待できず、行政が福祉的に対応をとらなければ本人が不利益を受けるおそれがある場合について、市町村長の申立てを可能としています(老人福祉法32条等)。

 申立ての流れとしては、次の図に示したとおりです。(コラム③図表.pdf)まずは、本人に配偶者や親族がいるかどうか確認します。当たり前の作業ではありますが、かつては、四親等以内の親族がいるかどうかの確認作業に時間を費やされて、なかなか市町村長の申立てが活用されていませんでした。このような事情を受けて運用が改善され、現在では、あらかじめ二親等以内の親族の有無が確認できれば、市町村長の申立てができるように運用されています。

 
 
  

ぷらすクローバー画像のサムネール画像のサムネール画像親族等による法定後見開始の申立てとの違い

 市町村長が法定後見人になる場合についても、基本は前回のコラムで説明した流れです。しかし、一般的な法定後見開始の申立てとは少し違う部分もありますので、お話しします。今回も成年後見人を前提に説明します。

 

1)申立書について

 申立書については、家庭裁判所で用いられる書式例を参考に申立てを行います。この部分については、親族等が申立人になる場合と同様です。実際の申立てにあたっては、後見制度を利用する本人(成年被後見人)の住所地を管轄する家庭裁判所になりますので、記載方法については、管轄の家庭裁判所で確認しましょう。

 

2)申立ての費用について

 申立てをするにあたって、印紙代(800円)、登記手数料(後見開始の審判にあたっては、印紙代4,000円)、鑑定費用等の負担が必要になります。また、後見等の事務を行うために必要な経費として、成年後見人の報酬等の費用負担が必要になります。これらの費用については、本人が負担することになります。親族等が申し立てる場合は申立人が負担する費用になりますので、負担者が異なることになる点に注意が必要です。

 

3)成年後見人等の候補者について

 成年後見開始の申立てにあたり、成年後見人の候補者がいる場合には、その旨を申立書に記載します。候補者の適任者がいない場合には、候補者を記載せずに申立てをすることも可能です。この場合、家庭裁判所は、成年後見人の選任にあたっては以下のようなことを考慮して判断することになります。

●成年被後見人の心身の状態や生活および財産の状況

●成年後見人となる人の職業、経歴、被後見人との利害関係の有無

●成年後見人が法人のときは、その事業の種類、内容およびその代表者と被後見人との利害関係の有無

●成年被後見人(本人)の意見

●その他一切の事情

 例えば、認知症高齢者で社会福祉施設に入所している人の成年後見人について、入所先の施設長を候補者とします。すると、本人と施設長とは、もともと契約関係にありますので、利益相反行為に当たる可能性があることに留意する必要があります。

※利益相反行為とは?… 施設長が本人(ここではAさんとします)の成年後見人になると、施設長はAさんのために代理で契約等を行うことができます。施設内でのサービス契約の変更を行うとき、施設長はAさんに代わって契約を交わします。しかし、このときの契約の相手方は施設長です。つまり、契約者当事者双方が施設長になりますが、このような場合、Aさんにとって不利な契約が締結されるおそれがないとはいえません。これを利益相反行為といい、成年後見人が利益相反行為に当たる契約を行う場合には、成年被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないとされています。(民法第860条において準用する同法第826条)

 

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